:司馬遼太郎の風景9

司馬遼太郎さんの“街道をゆく”をNHKスペシャルで放映したものを紀行文という形でまとめたもの。
司馬さんの“街道をゆく”の中の文を古典を引用するように、一つ一つ訪れていくのが非常に面白かった。この一文にこんなにも凝縮された思いや背景があるのか!と驚くことばかり。こういう文章をいつかかけるようになりたいですね、私は文章を字句を多く重ねるばかりでしか今は表現できないしなぁ。
それにこの本の構成がうまいなぁ、いつかはこういう紀行文を書いてみたいですね。史跡や地域の人々が活きて読み取れる。
この本では、四国の“南伊予・西土佐の道”、“梼原街道”、“阿波紀行”の三篇。最初の二つは読み終えた。宇和島や梼原はそれぞれ一度行ったことあるな。それぞれの土地の歴史からくる人柄の豊富さが、現代の日本を形作ってきたというのを一言で言い表すのが凄いなぁ。宇和島人の協調的な古風な都会人や、郷士と言う成り立ちから得た共通意識とその明治維新の嚆矢などなど。梼原の最後にある、司馬さんの言葉によると、

『日本国は、画一的ではないですなぁ』

なるほど、だから日本は面白いですね;-)
一方で、画一的に平均的にしてしまうことでいろいろと齟齬や誤りが起こる気がしないでもないなぁ。その辺の危惧もいろいろ書かれていて、司馬さんが歩いた時代から既に1,20年経っているこの本の紀行文の時点で時代の変化で歴史のある町並みが、画一的なインフラ設備によって駆逐されてしまうというのが嘆かれていた。じゃあもっと時代が下った今はどうなのか? 少しは歴史的な景観や、地域の主柱となる史跡は保護されるような動きもあるので、全く酷い世の中でもないように思える。まだまだ捨てたもんじゃない。